日本のサラリーマン社会は「すごろく型」から「将棋型」に変わってきている

2026年10月11日日曜日

サラリーマン

t f B! P L

昔の日本のサラリーマン社会というのは、かなり「すごろく」に近かったのではないかと思います。

すごろくには、あらかじめ決められたルートがあります。

スタート地点があり、進む道があり、そしてゴールがあります。

あとはサイコロを振りながら、その道をどれだけ順調に進めるかというゲームです。

昔の日本社会にも、それに近い人生モデルがありました。

いい大学へ行く。

有名企業へ入る。

結婚する。

家を買う。

会社で出世する。

そして定年まで勤める。

もちろん、現実はそんなに単純ではありません。

会社に入ってからも、人間関係があります。

配属があります。

昇進競争があります。

たまたま良い上司に当たることもあれば、理不尽な上司に苦しめられることもあります。

景気が良い時代に入社する人もいれば、不況の真っただ中に社会人になる人もいます。

そうした部分には、確かに「サイコロ」のような運の要素があります。

ただ、それでも昔は、進むべき道そのものはかなり固定されていたのではないでしょうか。

「この会社に入れば人生上がり」が成立した時代

かつては、

「いい会社に入れば安心だ」

「大企業に入れば人生は安泰だ」

という言葉にも、今よりずっと現実味がありました。

なぜなら、ゴール地点が社会全体でかなり共有されていたからです。

有名企業。

安定した収入。

持ち家。

家族。

役職。

退職金。

こうしたものが、一つの「上がり」の形として認識されていました。

もちろん、その道から外れる人もいました。

途中で会社を辞める人もいました。

独立する人もいました。

しかし、大多数の人が見る「標準ルート」は存在していました。

その意味では、すごろく型の人生は窮屈でもありましたが、安心でもありました。

進む方向が分かっていたからです。

今は途中で「盤面そのもの」が変わります

ところが今の時代は、少し様子が違います。

終身雇用は弱くなっています。

大企業に入っても、ずっとそこにいられるとは限りません。

会社そのものが買収されることもあります。

合併されることもあります。

業界そのものが縮小することもあります。

AIによって仕事の内容が変わることもあります。

かつては副業を禁止し、

「会社の仕事だけに集中してください。その代わり会社があなたの生活を守ります」

という構造がありました。

しかし今は、

「自分の身は自分で守ってください」

という方向へ少しずつ変わっています。

これまで自分が働いてきた業界が、未来永劫残る保証もありません。

社会には実際、衰退産業があります。

市場そのものが縮小することもあります。

場合によっては、今まで「ゴール」だと思っていた場所そのものが消えてしまいます。

ようやく大企業の管理職になった。

しかし、その会社が数年後に吸収合併される。

長年積み上げてきた専門知識がある。

しかし、技術革新によってその知識の価値が急速に下がる。

そんなことも起こります。

すごろくで言えば、

「ここがゴールだと思っていたら、そのマスそのものが消えてしまった」

ということです。

これはかなり厄介です。

人生の途中で、ルールそのものが書き換わるからです。

今の会社員社会は「将棋型」に近い

そこで私は、今のサラリーマン社会は少しずつ「将棋型」になっているのではないかと思っています。

将棋には、すごろくのような一本道がありません。

自分も動きます。

相手も動きます。

盤面は一手ごとに変化します。

会社も動きます。

同僚も動きます。

顧客も動きます。

景気も動きます。

技術も動きます。

法律も制度も変わります。

つまり、自分だけが固定された道を進んでいるわけではありません。

社会全体が動く盤面の中で、その都度、自分の一手を考える必要があります。

今の一手だけを見ていても仕方がありません

将棋では、目の前の一手だけを見ていても勝てません。

相手の駒を一つ取ったからといって、それだけで喜んでいるわけにはいきません。

今は得をしているように見えても、数手後に大きな損失につながることがあります。

逆に、今は少し不利に見える一手が、後々効いてくることもあります。

これはキャリアにも似ています。

例えば、新人時代に地味な部署へ配属されたとします。

そのときは、

「同期は花形部署なのに、自分は外れだ」

と思うかもしれません。

しかし、その地味な部署で身につけた知識が、10年後に大きな武器になるかもしれません。

逆に、今は華やかな部署にいても、その仕事そのものが数年後には縮小しているかもしれません。

今の年収だけを見る。

今の肩書だけを見る。

今の会社名だけを見る。

それでは判断できない時代になっています。

数手先を読む必要があるということです。

「大企業だから勝ち組」という見方が古くなっている

面白いのは、世間の見方はまだ「すごろく型」のまま残っていることです。

「あの人は大企業だから勝ち組だ」

「あの会社なら安定している」

「役職が上がったから順調だ」

こうした見方は今でも強く残っています。

しかし、当事者からすると、

「いやいや、ここから先も盤面は動くんだけど」

という感覚があるのではないでしょうか。

大企業でも事業再編があります。

黒字でもリストラはあります。

有名企業でも新技術に負けることがあります。

逆に、小さな会社にいる人が伸びる市場を掴むこともあります。

会社員が副業から新しい収入源を作ることもあります。

フリーランスが再び組織に戻ることもあります。

もはや、

「この会社に入ったら勝ち」

「ここまで行けば上がり」

という考え方は成立しにくくなっています。

大事なのは「正解のマス」を探すことではない

すごろく型の社会では、

「どのマスへ進めば正解か」

を考えることが重要でした。

いい学校。

いい会社。

いい部署。

いい役職。

しかし将棋型の社会では、固定された正解のマスはありません。

必要なのは、

今の盤面を見て、次の一手を考えること

です。

会社に残るのか。

転職するのか。

副業するのか。

資格を取るのか。

新しい分野を勉強するのか。

何もしないのか。

どの選択肢にも絶対的な正解はありません。

その時々の盤面によって変わります。

そして厄介なのは、一度決めたら終わりではないことです。

また数年後には考え直さなければいけません。

これが将棋型社会のしんどさでもあります。

しかし同時に、自由さでもあります。

すごろく型は安心でしたが、自由度は低かった

昔の社会を単純に美化する必要もありません。

一本道があるということは、そこから外れにくいということでもあります。

いい大学へ行けなかった。

新卒で大企業に入れなかった。

途中で会社を辞めた。

そうした人は、一度すごろくのレールから外れると、やり直しが難しい面もありました。

将棋型では、盤面が動く分だけ不安定です。

しかし、自分で打てる手も増えます。

途中から違う業界へ行く。

会社員をしながら副業する。

海外へ行く。

学び直す。

一度失敗しても別の形で再起する。

こうしたことは、昔よりやりやすくなっています。

つまり、

すごろく型は安心と引き換えに一本道でした。
将棋型は不安定と引き換えに選択肢があります。

どちらが絶対に良いという話ではありません。

ゲームの性質が変わったということです。

将棋に興味を持って、少し思ったこと

ここからは少し余談です。

最近、私は将棋に興味を持つようになりました。

オンラインの将棋アプリで、知らない人と対戦したりしています。

将棋は「一生の趣味になる」と言われることがありますが、実際にやってみると、その意味が少し分かる気がします。

覚えることも多いですし、考えることも尽きません。

それなら近所に将棋のサークルでもないかと思って探してみました。

すると、市のホームページに将棋の集まりが載っていました。

ところが、そのサークルには年齢制限があり、

60歳以上

となっていました。

私はこれを見て、少し不思議に思いました。

別に年齢不問でいいのではないか、と。

もちろん、同じ世代の方が話が合うというのは分かります。

しかし、自分と同じ年齢層だけで固まっていると、新しい価値観に触れる機会は減ります。

若い人と接すれば、自分とは違う考え方を知ることもあります。

単純に、その世代の元気さに触れることもあります。

年齢で区切ってしまうと、少し「守り」に入っているようにも見えます。

結局、そのサークルに入るのは諦め、しばらくはオンラインで修練を積もうと思っています。

人生も「上がり」を目指すゲームではなくなった

考えてみれば、これも今回の話と少しつながっています。

昔の人生には、

「ここまで来れば上がり」

という感覚がありました。

しかし、今は60歳になっても、新しい趣味を始めてもいい。

会社員を辞めてもいい。

新しい仕事を始めてもいい。

海外へ行ってもいい。

学び直してもいい。

盤面は続きます。

そう考えると、今の人生はやはり、すごろくより将棋に近いのだと思います。

最初から決められたゴールへ向かうのではありません。

その都度、盤面を見ます。

そして次の一手を考えます。

時には駒を失います。

悪手を指すこともあります。

それでも、その次の一手を考えればいい。

日本のサラリーマン社会は、

「決められたルートを進めばよかった社会」から、
「動き続ける盤面の中で、自分で手を選び続ける社会」へ

変わりつつあるのではないでしょうか。

そう考えると、これから必要なのは「正しいレールを探すこと」ではありません。

盤面を読む力と、次の一手を自分で決める力なのだと思います。



Preplyでビジネス日本語を教えています。日系企業で働いてみたい方、日本語の更なるスキルアップを目指す方など大歓迎です。お気軽にお問い合わせ下さい。

このブログを検索

ブログ アーカイブ

連絡フォーム

名前

メール *

メッセージ *

ポッドキャスト ビジネス日本語講座

QooQ