サラリーマンの人生において新卒で入った会社が意味するものは何か

2024年10月3日木曜日

サラリーマン

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 会社員というのは人それぞれだと思います。新卒で入社した会社に一生涯、定年を迎えるまで勤務し続けるという人もいれば、転職を繰り返す人もいるでしょう。自分の意志とは関係なく、会社が倒産して転職を余儀なくされることもあるかもしれません。

 

何れにせよ、最初に入る会社というのはサラリーマンにとって非常に重要な意味を持ちます。

 

なぜなら、学生の身分であった人は、最初に入った会社を通して、「会社というところがどういうところであるか」とか、「会社員としての仕事の進め方」などを体得していくからです。

 

それは、あたかも生まれてきた雛鳥が最初に見たモノを親だと認識するという「刷り込み」の話を彷彿とさせるものがあります。

 

どの会社に入っても、サラリーマンとしての基本的なビジネスマナーや、ビジネス基礎力というものを学ぶことはできると思います。それでも、最初に入社した会社のサラリーマンへの人格や性格への影響力を考えると、最初に入る会社選びというのはやはり相当、慎重に行なった方がいいと思います。

 

私自身の実体験を交えながらお伝えしましょう。

 

私が大学を卒業して入ったのは住宅リフォームの訪問販売の会社でした。住宅リフォームというのは、一般的な戸建住宅が経年劣化により家の各箇所が痛んできた際に、その補修や修繕をする業種、業態のことを言います。

 

日本にはその住宅リフォームのサービスを専門に行なう会社が多く存在するのです。私はその住宅リフォームの会社で営業マンとして職業人としてのキャリアをスタートさせました。

 

営業というのは世界のどこでもおそらく、「大変な仕事である」というのは人類が共通に持っている認識ではないでしょうか。なぜなら、営業といえば、嫌がるお客さんに無理矢理に自社製品やサービスをすすめていって、モノを買わせるような仕事であるという世間のイメージがあるからです。また、商品が売れない営業マンは会社からもコテンパンにその営業成績の悪さを糾弾されることがあります。

 

私が最初に新卒で入社した会社もそれは大変な会社でした。個人向けセールスはどこも大変な営業活動を強いられますが、その会社も御多分にもれず、大雨が降ろうが、台風が来ようが、天候に関係なく、一般の戸建住宅へ日々、訪問を繰り返し、一軒一軒、挨拶回りを行なって、お客さんとのアポとりを繰り返していったのです。

私は毎日、ヘトヘトになりながら、仕事をしていました。

 

おまけに、その会社には「昔、ヤンチャしていた」というような、ちょっと悪を気取ったチンピラ紛いの同僚や先輩も多数、在籍していました。日本全国から、力自慢、喧嘩自慢の体力を持て余したような若者が集まってくるような会社でした。誤解を恐れずに言えば、犯罪者予備軍のような血気盛んなチンピラがたくさんいて、私はそういう野卑で本能のままに生きる獣のような連中に囲まれながら、新卒一年目を過ごしたのです。

 

大学時代は気の合う友人にも恵まれて幸せに過ごしていました。大学にはアカデミックで俗世間とは隔絶された上品な雰囲気がありました。私はある種、ぬるま湯に浸かってのほほんと学生時代を過ごしていたのです。

 

それが新卒でそんな野蛮なリフォーム会社に入社したことにより、一気に環境が180度変わるような劇的な体験をしました。

 

今振り返ると、私はそのリフォーム会社に入って良いこともあったと思います。それは、営業マンとしての基礎体力をつける上で、私の場合、最初にキツイ営業を経験したので、その後、どんなに大変な営業会社に入っても、「新卒で入ったリフォーム会社よりはマシだ」と思えたからです。

 

それからまた、その後の人生で転職をしていく中で、まともな大企業で勤務したこともありますが、そういう企業でどんなに経歴が立派なサラリーマンがいて、その人がどんなに偉そうなことを喋っていても、あまり驚かない度胸がつきました。

 

そんじょそこらのサラリーマンが経験していないような修羅場を自分は経験しているという、そういう自信がついたのです。それぐらい住宅リフォームの訪問販売の会社というのは社内、社外ともに大変なところです。

 

とは言え、新卒でそういう極端な会社に入ってしまったのは、悪いこともあったかと今では思います。それは、その会社で馴染んだ価値観というものが、自分にとっての当たり前のようなものになっていってしまったからです。

 

それはすなわち、「営業というものは何がなんでも商品を売らなければいけない」、「売れない営業マンはゴミだ。どんな手段を使ってでも商品を売りさえすればいい」というような価値観です。

 

こういう考え方には、お客さんのことを思いやる視点が一切欠けています。本来、営業マンというのは自社のサービスや商品が本当に素晴らしいと心底思っているからこそ、それをお客さんにすすめるというのが筋だと思います。

それにも関わらず、「商品が売れさえすればいい」ということで、数字の達成だけが目的とされていき、職業人としての理念を欠いた営業マンが量産されていくことになるのです。

 

新卒で入ったリフォーム会社においても、毎朝、朝礼が行なわれて、社訓を大声で唱和させられるようなことがありました。大声で社訓を唱和させるのは、社員に企業戦士としての考え方を潜在意識に植え付けるような効果があったのかと思います。

 

そういう価値観が身体に染み付いてしまうと、それが社会人としての当たり前の価値観であるかのような錯覚に陥ってしまいます。

 

そのため、転職後に世間の価値観と自分の持っている価値観に乖離があるということに気付きながらも、最初の会社の影響から逃れて、自分自身の職業人としての価値観を確立していくのに、大変な時間がかかりました。

 

そういうこともあって、これを読んでいる方の中で、もし、就職活動中の学生の方がいたら、人生で最初に入る会社というのは、余程吟味して熟考した上で選択をした方が良いと申し上げておきたいです。

 

日系の大企業に入れば万事、メデタシ、メデタシというかと言えば、そうとは限らず、大企業の中にもブラック企業のように従業員の福利を著しく毀損して平気の平左という企業もあります。

 

とは言え、入ってみなければ分からないのも会社というものです。会社に入ってから、同僚、上司、その他の関係者に揉まれがら、手探りをしつつ、社会の中における自己を認識しながら、己の価値観というものを徐々に培っていくのがサラリーマンの人生なのかもしれません。

 

 

 


Preplyでビジネス日本語を教えています。日系企業で働いてみたい方、日本語の更なるスキルアップを目指す方など大歓迎です。お気軽にお問い合わせ下さい。

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