「日本人は外資に行くな」の深層──“国を出る自由”と“変われない企業文化”

2025年11月18日火曜日

働き方 働くこと

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 今日のテーマは、日本社会で時折聞こえてくる不思議な言葉――

日本人は外資企業に就職するな」。

外国人の方が聞いたら、こう思うかもしれません。
「働く場所を選ぶのは個人の自由では?」と。

しかし、この言葉の背後には、現在の日本が抱える構造的な問題
そして「国」と「個人」をめぐる深い心理的な断層が潜んでいます。


経済の理屈ではなく、感情の問題である

「外資に行くな」という主張は、一見すると経済的な議論のように聞こえます。
「外国企業で働くと、国の力が弱まる」「税金で教育した若者が外国の利益に貢献してしまう」。

確かに、表面的には筋が通っているように見えます。
しかし、現実を冷静に見れば、その理屈は成り立ちません。

外資企業で働く人の多くは日本国内に住み、日本で納税し、日本で消費をしています。
つまり、経済的にはしっかり日本社会を支えているのです。

では、なぜ「外資に行くな」という声が根強いのか。
その正体は、理屈ではなく感情――もっと言えば、寂しさと劣等感です。

長年「日本企業こそが正義」と信じてきた人々にとって、
若者が次々と外資を選ぶ現実は、自らの信仰が崩れていくように見える。
それは「経済の敗北」ではなく、「アイデンティティの崩壊」なのです。


若者が外資を選ぶ理由は単純だ

日本の若者が外資に流れる理由は、決して国家への裏切りではありません。
**「まともに働ける環境を求めているだけ」**です。

今も多くの日系企業には、こんな慣習が残っています。

  • 年功序列

  • 長時間労働

  • 上司への忖度

  • 成果よりも印象で評価

  • 新しいアイデアを出しても通らない

一方で、外資では成果が正当に評価されます。
言葉さえ通じれば、国籍も年齢も関係ない。
ワークライフバランスも柔軟で、休暇を取っても罪悪感を持つ必要がない。

だからこそ、彼らは外資に惹かれるのです。
それは「逃避」ではなく、生存の選択です。


問題は若者ではなく、変われない企業文化だ

外資に行く若者を責めるのは、筋違いです。
本当に変わらなければならないのは、外に出た彼らではなく、中に残る企業文化です。

もし日本企業が、

  • 成果を正しく評価し、

  • チャレンジする人を支援し、

  • 社員の時間と自由を尊重する

そんな環境を整えることができれば、
誰も「逃げる」ように外資へ行く必要はなくなるでしょう。

若者は国を捨てているのではなく、
変わらない上司と制度を捨てているのです。


「閉じ込める国益」から「循環する国益」へ

今の時代、「国益」とは人を囲い込むことではありません。
むしろ、人が自由に世界を循環することこそが、
長期的に国を豊かにする力になります。

海外で働く日本人が、異文化の中で苦労し、学び、
その経験を日本に持ち帰る――それは「流出」ではなく「還流」です。

外で学んだ知見を日本企業に還元したり、
新しい事業を起こす人も少なくありません。
彼らは国を離れたのではなく、外から日本を強くしているのです。


「外資に行くな」という国ほど、出ていきたくなる

「外資に行くな」という声が上がる国は、
往々にして「出ていきたくなる国」です。

問題は人ではなく、構造にあります。
変わらなければならないのは、働く個人ではなく、働かせ方を決める側です。

国家の強さとは、国民を縛る力ではなく、
自由に動く個人を支え、いつでも帰れる場所を整える力です。


結び──自由を恐れず、誇りを持って出よ

私たちが目指すべき社会は、
「どこで働くか」を自由に選べる社会です。

愛国とは、国にしがみつくことではなく、
国をより良くするためにどこででも努力できること。

外資で働く日本人は、国を出た叛逆者ではない
彼らは、外から日本を磨く修行者です。

彼らが再び帰ってきたとき、
「よく戻った」と誇りを持って迎えられる国であってほしい。

それが、本当の意味で「強い国」の姿なのではないでしょうか。


Preplyでビジネス日本語を教えています。日系企業で働いてみたい方、日本語の更なるスキルアップを目指す方など大歓迎です。お気軽にお問い合わせ下さい。

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