最近、SNSや動画サイトを見ていると、カピバラの映像や写真を目にする機会が増えています。温泉に浸かっている姿、ただ座っているだけの様子、ぼんやりと空間に溶け込んでいる姿。特別な動きがあるわけではないのに、なぜか見続けてしまう。
現在では、カピバラカフェやグッズ展開が成立するほどの人気を持つ存在になっています。では、なぜここまでカピバラは現代人に受け入れられているのでしょうか。
従来の「癒し」とは異なる存在
これまでの「癒し系」と呼ばれる存在には、多くの場合、役割がありました。
元気を与える、前向きにする、応援する――つまり、何かしらの機能を持っていました。
ゆるキャラも同様です。見た目は柔らかくても、地域PRや経済効果という明確な使命を背負っています。
それに対してカピバラは、誰かを励まそうともしません。
何かを伝えようとも、象徴しようともしません。
ただ、存在しているだけです。
この「役割を持たない存在」であることが、従来の癒しと決定的に異なる点です。
カピバラが象徴する「4つの無」
カピバラの魅力は、ある意味で極端にシンプルです。
それは、次のような性質に集約できます。
・無害である
・抵抗しない
・過剰な欲を見せない
・存在に社会的意味を背負っていない
これらは「弱さ」ではなく、現代社会においてはむしろ特異な状態です。
意味を求められ続ける社会
現代は、あらゆるものに意味を求める社会です。
仕事にも、趣味にも、発言にも、「何の役に立つのか」「どんな価値があるのか」という問いが付きまといます。
常に意見を求められ、評価され、意味づけされる環境では、何もしない時間すら「無駄」と感じやすくなります。
その中で、カピバラは何も要求しません。
見ている側に、感想も、学びも、結論も求めません。
カピバラを眺める時間は、意味から一時的に切り離される時間になります。
「何もしない」が成立する希少性
現代では、「何もしないこと」はむしろ難しくなっています。
常に成長、改善、成果、発信が求められる環境では、存在するだけで許される状態は非常に希少です。
カピバラは、その希少性を象徴しています。
努力もしない、主張もしない、意味も持たない。
それでも存在が肯定される。
これは、現代社会においてほとんど失われかけている状態です。
カピバラは「逃避」ではなく「休止」の象徴
カピバラに惹かれる感覚は、単なる現実逃避とは少し違います。
むしろ、意味や役割から一時的に距離を取る「休止」に近いものです。
何かを達成しなくてもいい。
誰かの期待に応えなくてもいい。
意味を持たなくても存在していい。
この感覚自体が、現代では非常に貴重になっています。
静かな避難所としての存在
カピバラが支持される理由は、可愛さや珍しさだけではありません。
「存在するだけでいい」という状態を体現しているからです。
不安定で、常に意味を求められる時代の中で、意味を持たない存在に安心を感じる。
カピバラは、そうした時代の空気を映す存在なのかもしれません。
何もしないことが、そのまま肯定される。
その静かな感覚こそが、現代人にとっての小さな避難所になっているのかもしれません。