会社には必ずいます。
特別な専門知識があるわけでもない。
圧倒的な成果を出しているわけでもない。
しかし不思議と周囲から好かれ、
上司からも評価される人。
いわゆる
「感じのいい人」
です。
こういう人を見ると、
「あの人は性格がいいからだ」
と思いたくなります。
もちろんそれもあるでしょう。
しかし組織の中で評価される理由は、
もっと実務的で、
もっと構造的なものではないかと思うのです。
「感じの良さ」は性格ではなく機能である
まず考えてみてください。
会社とは何でしょうか。
会社とは、
複数の人間が同時に仕事を進める装置です。
つまり、
情報伝達の装置
でもあります。
上司から部下へ。
部下から上司へ。
部署から部署へ。
顧客から会社へ。
一日中、
情報が行き来しています。
そして組織において最も嫌われるものの一つが、
伝達の遅れ
です。
聞き返し。
認識違い。
報告漏れ。
反応の遅さ。
こうしたものは全てコストになります。
だから組織は、
相手の理解を助けてくれる人
を好むのです。
「感じのいい人」は思考コストを下げる
感じのいい人を観察すると共通点があります。
返事が早い。
話が明瞭。
反応が分かりやすい。
相槌が自然。
報告が簡潔。
つまり、
相手に余計なことを考えさせない
のです。
これは非常に大きな価値です。
例えば、
「了解しました」
と即答する人と、
返事が曖昧な人。
どちらが仕事を頼みやすいでしょうか。
答えは明らかです。
感じのいい人は、
人を気分よくさせているのではありません。
相手の思考コストを下げているのです。
だから評価されるのです。
上に行くほど「感じの良さ」を重視する
面白いことに、
社長や役員になるほど、
この能力を重視する傾向があります。
なぜでしょうか。
理由は単純です。
彼らは大量の判断をしているからです。
経営者は一日に何十回、何百回と意思決定を行います。
そんな中で、
話が分かりにくい。
結論が見えない。
反応が遅い。
そういう人は負担になります。
逆に、
結論が早い。
報告が簡潔。
反応が分かりやすい。
そういう人は扱いやすい。
つまり、
能力以前に仕事が進む
のです。
組織にとってこれは非常に重要です。
コミュニケーションとは摩擦の管理である
人間同士が働けば、
必ず摩擦が生まれます。
考え方も違う。
育った環境も違う。
性格も違う。
だから衝突します。
誤解も起きます。
イライラもします。
完全に摩擦をなくすことはできません。
しかし、
減らすことはできます。
感じのいい人とは、
この摩擦を減らす技術を持った人
とも言えます。
話しやすい。
頼みやすい。
相談しやすい。
こうした特徴は、
組織において潤滑油として機能します。
これは単なる愛想ではありません。
実務能力の一種です。
頭が良くても評価されない人
逆に、
非常に優秀なのに評価されにくい人もいます。
知識は豊富。
分析力もある。
専門性も高い。
しかし、
返事がない。
反応が薄い。
何を考えているか分からない。
話が長い。
すると周囲は疲れます。
能力が高いかどうかとは別に、
一緒に仕事をするコストが上がるからです。
組織は天才だけで動いているわけではありません。
むしろ、
人間同士の連携で動いています。
だから、
感じの良さが評価対象になるのです。
このゲームに参加しないという選択肢
もちろん、
こうした評価軸が嫌な人もいるでしょう。
それは自然なことです。
誰もが人付き合いを得意とするわけではありません。
その場合、
自分を変えるだけが答えではありません。
環境を変えるという選択肢もあります。
個人事業。
研究職。
創作活動。
リモート中心の働き方。
人との接触が少ない仕事。
そうした環境では、
感じの良さの価値は相対的に下がります。
つまり、
評価基準そのものが変わるのです。
組織は「感じの良さ」を買っている
結局のところ、
組織が感じのいい人を評価するのは、
人格を評価しているからではありません。
その人が、
伝達コストを下げる。
摩擦を減らす。
判断を速くする。
という機能を提供しているからです。
感じの良さとは、
性格の問題ではなく、
組織運営上の重要な技術なのです。
そして日系企業という組織社会では、
その技術が専門能力以上に高く評価される場面が少なくありません。
だからこそ、
感じのいい人は好かれるのです。
そして好かれるだけではなく、
組織の中で生き残りやすいのだと思います。