営業においてマニュアルは役に立たない

2024年10月6日日曜日

営業職

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日系企業ではマニュアルが好まれることが多いようです。営業マニュアルや、接客マニュアルのような類の台本が会社によって用意されていて、そのマニュアルに沿って社員は仕事をしなければならないこともあります。

 

このマニュアルですが、会社に入ったばかりの新人のように、仕事の経験が浅いうちはある程度の効果が見込めることもあるでしょう。業務上の知識や経験が何もなければ、どのようにお客さんの前で話をしたら良いか全く分からないからです。

 

ただ、社員がマニュアルに頼り切るというのも考えものです。マニュアルというものは、起こりうる全ての可能性を網羅できるものではありません。営業の場合で言いますと、お客さんからの反応、質問、断り文句など、全ての言動に対して、応酬できるようなマニュアルを作るのは不可能であろうと思われます。

 

よしんば、AIなどを利用してそうしたマニュアルの作成が可能だったとしても、そのマニュアルの情報量は膨大なものになってしまい、一人の営業マンがそのマニュアルを暗記することは難しいでしょう。

 

また、営業マンにとってのマニュアルの弊害というのはまだまだあって、それは「マニュアルが営業マンの仕事に対する自主性を阻害してしまう」ということなのです。

 

やる気のある営業マンほど、誰に言われなくても積極的に営業の仕事を捉えていて、例えば業務時間以外の時間で営業についての本を読むなどして自ら率先して勉強に励んでいたりします。

 

それから、売れている営業マンの営業トークなどにこっそりと聞き耳を立てるなどして、自分の営業スタイルに活用しようなどとしているものです。

 

昔の営業マンというのはそうした努力をしたものでした。それは上司に言われたからという後ろ向きな理由ではなくて、率先して、もっと売れる営業マンになりたいという内発的な動機に突き動かされて頑張る自然な努力の形だったのです。

 

日本の営業会社においてはどういうわけか、社員を細かいマニュアルで徹底的に管理してしまうような会社があります。

 

以前に私は置き薬の営業に従事したことがありました。置き薬というのは日本では富山県が発祥の地と言われています。それは個人向けのルートセールスであり、営業マンは一般の個人客の家を訪問して、お客さんの家に薬箱を置かせてもらい、お客さんは自分が使用した薬の分だけ次回の訪問の際に営業マンから料金を請求されるという営業のシステムでした。営業の仕組みとしては非常にシンプルで、合理的であると思われますが、現在においては一般的な薬品を販売するだけではあまり儲からないこともあって、高価なサプリメントを販売するなどして儲けを確保するようにする会社が多いようです。

 

私が入った置き薬の会社には営業マン向けの非常に細かいマニュアルが存在しました。営業マンがお客さんと会って挨拶をしてから商談、契約締結に至るまでの一言一句はもちろんのこと、営業マンがお客さんの家に入る前にインターフォンを押して、家に入ってから、どのように自分のカバンを置くかなど、一挙手一投足までがマニュアルに規定されていました。

 

おまけに毎朝、社員同士のロープレが行なわれていて、先輩社員がお客さん役、新人は営業マン役などに分かれて、そのマニュアル通りにトークをする練習をさせられました。

 

マニュアルにあった文言をちょっとでも間違えると上司から叱責が飛んできました。上司からの複数回以上に渡るダメ出しに完全に身も心も萎えた状態で、半ばモチベーションがゼロになりながら、お客さんのところへ出かけていったものでした。

 

営業社員は会社からタブレットが支給されていましたが、それは営業社員を管理するためのものであるということをすぐに知りました。というのは、営業社員がタブレットを携帯することによって、客先に何時に到着して、何分間滞在して商談したのか、昼休みの休憩は何時間とったのかといった情報が逐一、上司のところにインターネットによって伝わるようになっていたのです。

 

夕礼というミーティングがその会社にはありましたが、その夕礼では毎回決まって上司からの部下に対する事細かな質問がありました。それはすなわち、「なんで、こんなに長く休憩を取っていたのか」とか、「この家と次の家に移動するときに、○○分もかかっているけど、俺が同じエリアを営業するんだったら、こんなに時間かからないよ。なんでこんなに時間かかったの?」などといった細かい質問です。

 

その質問に対してちょっとでも反論しようとしたら即座にまた、重ねて反論をしてきます。上司は詰め将棋のように冷静に、一応は論理立てて話してきているようでしたが、根本にある前提というのはブラック企業の論理でしたので、そもそも彼らと冷静な話し合いなど成立しないのは自明のことでした。

 

私は二週間程度でしたが、上司からの朝夕の執拗な詰めに耐えていましたが、結局、堪忍袋の尾が切れてしまい、私はくだんの上司を面罵し、「この野郎、しつこく聞いてくるのもいい加減にしろ!」と怒鳴りあげて、即座に退職を申し出て、即日にそれは受理されました。私はすぐさま退職することになったのです。

 

今から思い返しても、二週間程度という短い就業期間でしたが、その会社を辞めたことは全く後悔をしていません。その手の営業会社にありがちなのですが、その会社においても朝礼での挨拶の練習や、社訓の絶叫などが社員に強制されていましたので、やはり、まともな会社で無かったということは確かです。

 

大企業が全てホワイトの優良企業だと私は申し上げませんが、残念ながら日本の中小の零細企業には社員のことを子供扱いして、経営者の理想を社員に無理矢理に押し付けてくるような会社が多いのも事実です。

 

今回の記事における置き薬の会社での営業マニュアルですが、ああいった営業マニュアルを会社から強制されればされるほど、やる気を失う人間というのは少なからず存在するのです。

 

仕事というのは他人から強制されてやっていては面白くありません。自ら創意工夫して、営業の場合であれば、「どうやったらもっと商品が売れるだろうか?」と思い巡らして、日々、努力することを自ら楽しむタイプもいるのです。

 

反対にもし、そういうマニュアルに従って営業するのを好む営業マンがいるとしたら、私は逆に心配になります。マニュアル通りにやって売れる可能性というのを否定はしません。ですが、もし、マニュアルが通用しなくなった時にはどうするのか。将来、他社に転職することがあったら、マニュアルをまた一から覚えなければなりません。その他社のマニュアルがポンコツな出来栄えであった場合、その時は自分でマニュアルを作成しなければならなくなるでしょう。

 

やはり、マニュアルのみに頼っていては、アドリブがきかなくなるということであり、営業という仕事に従事したからには、その職業人生の初期の頃には会社から支給されたマニュアルに頼ることも致し方ないかもしれませんが、最終的にはマニュアルを脱して、あるいは超越して、自分固有のマニュアルというものを作成できるようにならねばなるまいと思います。

 

どうも日本人というものは他人を真似るということにあまり疑いを持たない人が多いような気がします。成功者を真似るのが自分も成功する道であるなどと単純に考えてしまう人が多いようです。

 

製造業の世界においても、日本が焼け野原であった昭和の時代から、日本のメーカーは海外の舶来品を徹底的に真似ることによって日本独自の素晴らしい製品を作り出したのだなどという神話があったりします。そういう考え方は非常に分かりやすいものであるから盲信しやすいのも致し方ないかとは思いますが、単純に他人を真似ているようでは真のイノベーションは期待できますまい。

 

イノベーションというのは何も工業製品や、最近で言えばITのような最新の分野の話だけではなくて、営業マンのような職業人にとっても高い視座を見据えて日々自分の仕事を改良していくことは求められてくるわけです。そうした独自の仕事に対する努力を忘れた営業マンというのは時代の流れとともに売れなくなってきたりするから要注意なのです。


Preplyでビジネス日本語を教えています。日系企業で働いてみたい方、日本語の更なるスキルアップを目指す方など大歓迎です。お気軽にお問い合わせ下さい。

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