今回は、昔話の「こぶとりじいさん」を題材に、日本の営業の難しさについてお話ししていきたいと思います。
最近、趣味で中国語を勉強し始めたのですが、まだまだ初心者なので難しい内容は理解できません。そこで、YouTubeなどで子供向けの中国語動画を見ることもあります。そんな中で、日本の昔話の中国語バージョンを見つけたんです。子供の頃によく見た「こぶとりじいさん」もその一つでした。改めてこの物語を見てみると、日本の営業に通じるものがあるなと感じたんです。特に、日本人が営業に求める人物像のようなものが垣間見える気がしました。
今回は、この「こぶとりじいさん」の物語を振り返りながら、日本の営業について考察してみたいと思います。ご存知の方も多いかと思いますので、まずは簡単に物語の内容を説明させてください。
「こぶとりじいさん」のあらすじ
昔々、日本のあるところに、顔にこぶのあるおじいさんが二人いました。一人は性格が明るく陽気で、細かいことを気にしないタイプ。村のガキ大将にこぶを馬鹿にされても、全く気にしませんでした。もう一人は性格が暗く陰気で、細かいことを気にするタイプ。同じようにガキ大将にこぶを馬鹿にされると、本気で怒り返すような心の狭いおじいさんでした。
ある時、陽気なおじいさんが山へ木を切りに行くと、突然の大雨に見舞われ、雨宿りをする場所を探していました。すると、大きな木のうろを見つけ、そこで雨が止むのを待つことにしました。眠り込んだおじいさんが夜中に目を覚ますと、どこからか鬼たちが現れ、太鼓や笛でどんちゃん騒ぎを始めたのです。鬼たちは大勢で踊り始めましたが、最初は怖がっていたおじいさんも、いつの間にか鬼たちの踊りに加わっていました。我を忘れて楽しそうに踊るおじいさんを見て、鬼のリーダーは大変気に入り、「明日の晩もここに来い」と誘いました。おじいさんが返事に困っていると、鬼は突然おじいさんの顔のコブを取り、「このコブを返してほしければ明日の晩にまた来い」と言い残して去っていきました。コブがなくなって喜んだおじいさんは、村へ帰ってこの出来事を陰気なおじいさんに話しました。
陰気なおじいさんは、自分のコブもなくしたいと思い、その晩、同じ木のうろへ行きました。夜になると鬼たちが現れ、宴会を始めましたが、陰気なおじいさんは踊りが好きではなく、ただ見ているだけでした。しかし、コブを取りたい一心で勇気を出して鬼たちの踊りに加わろうとしましたが、踊りが下手だったため、鬼たちの機嫌を損ねてしまいます。鬼のリーダーは、つまらない気分になったのでしょう、前日陽気なおじいさんから預かっていたコブを、陰気なおじいさんのもう片方の顔につけてしまったのです。こうして、陰気なおじいさんは両方の顔にコブがある状態になってしまい、鬼たちはそのまま去っていきました。
この物語から見える日本の営業の難しさ
子供の頃は何とも思わなかったこの話ですが、日系企業で営業マンを経験した今、改めて考えると、日本の営業に通じる点があると感じます。
物語のポイントは、陽気で明るい性格のおじいさんが、鬼たちの機嫌を取り、踊りも上手だったため、コブを取ってもらえたこと。一方、陰気で暗い性格のおじいさんは、鬼たちを喜ばせることができず、結果的にコブが増えてしまったことです。
これは、日本の営業、特に法人営業の世界で、明るさや陽気さといった性格的な要素が重視される傾向と重なるように思います。例えば、お客様との接待の場で、カラオケなどで場を盛り上げることが求められることがあります。中には、お客様の前で上半身裸になるような営業マンもいると聞きます。これは極端な例かもしれませんが、建前を脱ぎ捨てて、自分の本音を見せ、相手に腹を見せることが、お客様との信頼関係を築く上で重要視されることがあるのではないでしょうか。
普段は真面目な顔で仕事をしている人が、宴会の場ではバカになって周りを笑わせることで、「隠し事のない人間だ」「付き合いやすい人間だ」という印象を与えることを期待されているのかもしれません。しかし、これはキャラクターによって効果が異なり、真面目な人が無理にそのようなことをしても、痛々しく見える場合もあるでしょう。
また、日本人の場合、自意識を克服していない人を嫌う傾向があるように感じます。自分自身は自意識を克服できていないにも関わらず、相手には根性を見せることを求めるような場面もあるのではないでしょうか。
もちろん、外国とのビジネスにおいては、必ずしも腹を見せ合うことが重要とは限りません。日本が比較的単一民族国家であり、村社会のような環境で育ってきた背景から、腹を見せ合うことがコミュニケーションの基本となる文化が根付いたのかもしれません。しかし、グローバル化が進む現代においては、異文化理解や高度な交渉術が求められるようになっているため、単純に腹を見せるだけで良いとは言えないでしょう。
それでも、日本のビジネスシーン、特に年配の方々には、この「こぶとりじいさん」の陽気なおじいさんのようなタイプを好む人が多いのではないでしょうか。陰気なおじいさんは、現代の日本社会においても、もしかすると敬遠されてしまうかもしれません。
まとめ
今回のブログでは、「こぶとりじいさん」の物語を通して、日本の営業における性格の明るさやコミュニケーション能力の重要性、腹を見せる文化について考察してみました。もちろん、営業の成功には様々な要素が複雑に絡み合っていますが、この昔話が示唆する日本の営業の難しさは、今もなお一部に残っているのかもしれません。