本日は、「社内政治が嫌ならサラリーマンになるべきではない」というテーマでお話させていただきます。
私自身の会社員時代を振り返りますと、大企業から中小企業まで、様々な種類の会社を経験しました。また、いくつかの異なる産業分野を渡り歩く中で、本当に多種多様な性格の方々と出会いました。もちろん、素晴らしい人格の方もいらっしゃいましたが、残念ながらそうでない方もいらっしゃったのが現実です。
会社という場所は、決してお釈迦様が集まったような聖域ではありません。むしろ、様々な思惑を持った生身の人間たちが混在している、生々しい人間社会そのものです。そこで、私たちは様々な性格の人々と上手く付き合っていかなければならないのが、会社という組織なのです。
この点は、学生時代とは大きく異なると感じています。学生の頃は、自分の好きな人や話していて楽しい人、気の合う人とだけ付き合っていればよかったのです。もし、自分と合わないと感じる人がいれば、不快だから付き合うのを避けるという選択もできました。
しかし、会社に入った途端、そうはいきません。たとえ「この人嫌だな」、「何か偉そうだな」、「価値観が合わないな」、「話していて面白くないな」などと感じる人がいても、仕事上、どうしても付き合わざるを得ない状況が出てくるのです。
特に、自分の上司が、人格的に問題があるようなタイプだった場合、その人とのコミュニケーションを完全に断つことは実質的に不可能です。業務を進める上で、どうしても報告や相談、連携が必要になるからです。
ですから、私ははっきり申し上げたいと思います。「本当に社内政治というものが嫌なのであれば、サラリーマンという働き方は、元々向いていないのではないか」と。
会社に属するということは、必ず誰か他の人と一緒に仕事をすることになります。協力し、強調し合いながら、一つの目標に向かって仕事を進めていく場面が数多く出てきます。その過程で、どうしても自分と合わない人とも、妥協しながら付き合っていく必要が出てくるのです。
そのアプローチの仕方は人それぞれでしょう。我慢して付き合う人、自分の意見を主張しつつ周りに受け入れてもらうという高度なテクニックを使う人もいるでしょう。後者は難しいですが、サラリーマンとして長くやっていくには欠かせないスキルと言えるかもしれません。私自身は、会社を辞めるまでそれが得意ではありませんでしたが。
入社する会社や選ぶ職種によっても状況は異なりますが、年齢を重ねて昇進していくにつれて、人間関係はさらに複雑化していきます。特に、中間管理職のような立場になると、これまで第一線で部下として働いていた時とは全く異なる視点で、社内での人間関係を捉えなければならなくなるでしょう。多くの中間管理職の方が、この社内コミュニケーションの複雑さに悩んでいるのではないでしょうか。
また、仕事の場面で人を公平に評価するということは、本当に難しいことです。仕事ができるように見える人がいても、その評価が全ての人に一致するとは限りません。そもそも、「仕事ができる」という概念自体が非常に曖昧なものです。客観的に証明することは難しく、評価する側の感情や偏見によって左右される可能性も十分にあります。
スポーツの世界が人気を集めるのは、その勝負が単純明快だからでしょう。勝者と敗者がはっきりと分かれ、結果が分かりやすい。例えば相撲は、勝った負けたがすぐに分かり、勝者には賞金が与えられ、称賛を浴びますが、敗者は潔く場を去ります。
しかし、サラリーマンの世界の勝負は曖昧です。数字で結果が出やすい営業の世界でも、目標達成という明確な指標がある一方で、社内の様々なことに気を遣わなければならない煩わしさがあります。業務委託のような形で仕事をするプロフェッショナルな営業職とは異なり、固定給をもらって働くサラリーマンである以上、社内政治に巻き込まれることは避けられないのです。
もちろん、会社や職種によっては、社内政治をあまり意識せずにいられる環境もあるかもしれません。最近では、リモートワークの普及により、物理的に嫌でもコミュニケーションを取らなければならない状況も減ってきています。
しかし、本質的に、会社という組織である以上、社内政治は避けられないものだと私は考えています。ですから、どうせ会社で働くのであれば、その点を意識して立ち回っていく方が賢明でしょう。どのように立ち回るかは人それぞれですが。
会社員時代を振り返ると、必ずしも能力が高い人ばかりが出世するわけではありません。むしろ、無能であっても大声で理屈をまくし立て、パフォーマンスをするような人が出世していく現実も見てきました。おそらく、多くの人がそのようなサラリーマンの世界に嫌気が差しているのではないでしょうか。
結局のところ、会社という組織で働く以上、程度の差はあれど社内政治からは逃れることは難しいと言えます。もし、社内政治がどうしても嫌だというのであれば、サラリーマンという働き方そのものを再考する必要があるのかもしれません。もしサラリーマンとして働く道を選ぶのであれば、社内政治もまた仕事の一部であるという認識を持ち、賢く立ち回る心構えが大切になるでしょう。