今日は、会社員生活における上司との関係について、私の経験を交えながらお話しさせていただきたいと思います。
会社員の皆さんは、上司を選ぶことはできないものだと感じていらっしゃることでしょう。しかし、どのような上司の下で働くかによって、その後の会社員人生は大きく左右されると言っても過言ではありません。素晴らしい上司との出会いは、自身の成長を促し、仕事の喜びを感じさせてくれる一方、相性の合わない上司や、いわゆる問題のある上司の下では、仕事の幸福度が著しく低下してしまうことも少なくありません。
私自身も、会社員生活を振り返ってみると、「この上司は本当に大変だった」と今でも思い出すような方が何人かおります。その中でも特に印象に残っているのが、マイクロマネジメント型の上司です。
マイクロマネジメントとは、部下の仕事を細部にわたり管理したがる上司のことで、まるで重箱の隅をつつくように、部下のあら探しをし、欠点を指摘し、自分の理想を押し付けるタイプです。彼らは往々にして仕事ができるため、その上の上司や社長からの信頼は厚いのですが、プレイヤーとしての能力が高いことと、人を管理したり、リーダーシップを発揮したりする能力は別物です。マイクロマネジメント型の上司は、部下の上に立つべきではないと私は常々感じておりました。
残念ながら、世の中の経営者の中には、組織運営や人材を見抜くという点で、必ずしも優れているとは言えない方もいらっしゃるようで、それがマイクロマネジメント型の上司が依然として存在してしまう一因なのかもしれません。
さて、私が過去に経験したマイクロマネジメント型の上司との具体的なエピソードをご紹介したいと思います。それは、私がタイのローカル企業で最後に働いていた頃のことです。その会社は、日系の研削用砥石と呼ばれる工場で使われる消耗品を扱う、タイのローカル専門商社でした。社長はタイ人でしたが、そこに一人の日本人がおり、後々その方が私の直属の上司となりました。
面接の場では、その上司は非常に良い印象の方でした。爽やかなルックスで、柔道をやっていたという体育会系の経歴もお持ちでしたが、話し方は穏やかで、常識もよくわかっていそうな人物でした。私は、「この人の下でなら楽しく働けるだろう」と思い、入社を決意したのです。
しかし、入社して2ヶ月ほどの試用期間を過ぎた頃から、その上司は徐々に本性を現し始めました。それはまさに、マイクロマネージメントだったのです。部下のすることなすこと、とにかく細かく管理したがるのです。
例えば、社外に送るメールは必ず一度その上司に確認させ、チェックを受けてからでないと送ってはいけないと言われました。最初は従っていたものの、仕事に慣れてくると、私は勝手に判断してチェックを受けずに送るようになりました。
また、営業職でしたので外回りに出かけることもあったのですが、その会社では直行直帰が認められていました。会社から支給された車で、タイ各地の工業団地へ向かい、一日の仕事を終えて帰宅する際、毎日必ず電話で上司に報告をしなければなりませんでした。これが私にとって非常に苦痛でした。
なぜなら、電話をするたびに、報告の仕方が分かりにくいなどと、とにかく難癖をつけられたからです。私自身は報告に問題があるとは思っていませんでしたが、おそらく上司も私のことを良く思っていなかったのでしょう、何か理由をつけては私の落ち度を探し、強く叱責してきたのです。そのたびに、私は猛烈な怒りを覚え、危うく運転中に事故を起こしそうになったこともありました。
このような経験を通して、私は強く思うようになりました。上司というものは、部下をあまりにも管理すべきではないと。部下も決して馬鹿ではありませんし、自尊心やプライドを持っています。それを理解せずに部下を子供扱いするような上司は、上司として失格だと感じます。
ここで思い出したのが、日本の古いCM、「タンスにゴン」のキャッチコピー、「亭主元気で留守がいい」です。これは1980年代のCMで、当時の日本の家庭における夫婦関係を反映したものでしょう。家庭を顧みず仕事ばかりする夫に対して、妻たちが内心思っていた気持ちを表していると言えるかもしれません。
この言葉は、上司と部下の関係にも当てはまると私は思うのです。私の場合、「上司元気で留守がいい」と心の中で思っていました。私が勤めていたタイの会社の上司は、まさに働き者で常に動き回っているようなタイプでしたが、彼が外回りの営業に出ている間は、私は会社で一人、比較的自由に仕事ができました。タイ人の同僚とも仲が良かったので、マイペースで仕事ができたのです。しかし、上司が内勤の日は、どうしても気を遣ってしまい、リラックスして仕事をするというわけにはいきませんでした。
もちろん、マイクロマネジメント型の上司との相性が良いという方もいらっしゃるかもしれません。例えば、指示待ちで、自分の意見よりも上司の指示に従って仕事を進めたいというタイプの方であれば、そうした上司とうまくやっていける可能性もあるでしょう。
しかし、自分で考え、工夫しながら仕事を進めていきたいと考えるタイプの人にとって、マイクロマネジメント型の上司はまさに天敵であり、その存在は目障りで厄介なものなのです。
今回の話が、皆様の会社員生活における上司との関係について、少しでも考えるきっかけになれば幸いです。皆様はどのような上司の下で働きたいですか?また、どのような上司の下で働いてきたでしょうか?
最後までお読みいただき、ありがとうございました。