日本の企業社会では、上司から部下に対して「言い訳をするな」という言葉がよく聞かれるようです。営業の例を挙げますと、月間のノルマを達成できなかった部下に対して、上司が理由を問い詰める場面があります。その際、部下が事情を説明しようとすると、上司から「言い訳をするな」と一蹴されてしまうことがあるようです。
確かに、何事においても、うまくいかない時にすぐに言い訳をするのは見苦しいと感じられますし、言い訳よりも先に行動する前向きな姿勢は好まれます。しかしながら、会社組織において、上司が部下に対して一方的に「言い訳をするな」とすることは、部下の言葉を封じることにつながりかねません。
部下は、目標を達成できないなりに何らかの原因を抱えていることが多く、その原因が正しいかどうかは別として、まずは原因を抽出することが重要です。上司は、部下の言い分をいったんは聞き、その上で、理にかなっている点や部下の責任ではない点、あるいは部下の認識が間違っている点を丁寧に検証していく必要があるのではないでしょうか。
もし、そうした丁寧なコミュニケーションを一切省いて、「言い訳は全て悪い」としてしまうと、日系企業のダイナミズムや活力が失われていく可能性があると感じています。近年、日本企業においても、自由なコミュニケーションや社員間の議論が尊重される傾向があり、それが新しい製品やサービスの開発につながることが期待されています。硬直的な上下関係の中で部下が自由に意見を言えないような会社では、良い仕事はできないでしょう。
しかしながら、依然として、上司のプライドからか、部下が自由に意見を言えないような雰囲気の残る会社も存在します。うまくいかない部下に対して、理由を聞かずに「言い訳をするな」と一括してしまうのは、決して良いことだとは言えません。
高度経済成長期のような時代であれば、上からの指示だけでもうまくいくことがあったかもしれませんが、現代は多様性の時代です。ビジネスの現場では、様々な国の人々と協力していく必要があり、そうした中で、部下の言い分を「言い訳」として切り捨て、まともに議論しない上司は、その役割を果たしているとは言えないのではないでしょうか。
もちろん、全ての言い訳が許されるべきだというわけではありません。しかし、現代においては、言葉を尽くして社内でのコミュニケーションを図るべきであり、部下が本音を言えないような会社になってしまうと、面従腹背の部下が増え、会社の発展は望めず、衰退の一途を辿る可能性が高いです。
今回の話は捉えどころがない部分もあったかもしれませんが、部下の言葉に耳を傾け、真摯に向き合うことの重要性について、少しでもご理解いただけたら幸いです.