今回は、私が20代の頃に経験した少し変わったアルバイトについてお話ししたいと思います。それは、「コピーを取るだけ」という、非常にシンプルな仕事でありながら、当時としては驚くほど実入りが良かったという体験談です。
当時、私は東京で生活しており、池袋の近くに住んでいました。正社員という形で定職には就かず、派遣やアルバイトを転々とする生活を送っていたのですが、その中で特に印象に残っているのが、このコピーを取るだけの仕事でした。
高時給で人間関係のストレスもなし
このアルバイトは、大学時代の友人からの紹介で得ることができました。仕事内容は、とある大手企業(明治大正時代から続くような歴史のある企業でした)に保管されていた古い文書をデジタルデータ化するために、ひたすらコピーするというものでした。社内報か社史のどちらかの書類でした。
本当にただ書類を一枚一枚コピーしていくだけで、難しい作業は一切ありませんでした。にもかかわらず、時給はなんと2500円ほどだったと記憶しています。アルバイトとしては破格の待遇ですよね。しかも、一日の労働時間は5~6時間程度で、しっかりと給料も支払われました。
何よりも良かったのは、煩わしい人間関係が一切なかったことです。指定された事務所に行き、用意された書類を黙々とコピーするだけ。本当に楽な仕事でしたし、当時は「こんなに良い仕事が見つかった!」と心底喜んでいました。
楽な仕事、高収入…本当に「良い」のか?
しかし、今改めてこの経験を振り返ってみると、「作業自体は楽で、人間関係の苦労もなく、ただ作業するだけで高いお金がもらえるというのは、本当に良かったのだろうか?」という疑問が湧いてきます。
まず、この仕事を通して、ほとんどスキルは身につきませんでした。コピーを取るという作業自体は、数週間もすれば熟練してしまうでしょう。もし、何年もコピーを取り続けるだけの仕事をしていたら、「コピー職人」になれるかもしれませんが、それ以上のスキルアップは見込めません。時間と工夫を重ねてスキルを向上させていくという、仕事における重要な要素が欠けていたと言えるでしょう。
もちろん、「スキルなんてどうでもいい、とにかくお金が欲しい」という方もいるかもしれませんし、それが一生続けられるのであれば、それでも良いのかもしれません。また、他にやりたいことがあって、今は生活費を効率よく稼ぎたいという場合も、このようなアルバイトは有効かもしれません。
しかし、そういった特別な事情がない場合、ただ単に書類をコピーしていくというような仕事は、あまり好ましくないと感じます。
仕事における成長と人間関係
仕事においては、やはり自分が成長したり、スキルが高まったと感じる喜びも重要なのではないでしょうか。また、コピーを取るという単純な作業であっても、巡り巡って誰かの役に立っていることにはなるでしょう。
ただ、このようなうまい話はそうそうあるものではありません。あったとしても、限られたコネクションから得られることが多く、そうした関係性は決して永遠に続くものではありません。ビジネスが絡むと、人間関係はもろく、いつ途切れてしまうかわからないものです。
人間関係は大切ですが、それに頼りすぎてスキルアップを怠ってしまうのは危険だと感じます。人間関係を大切にしつつも、自分の仕事に対する努力や研鑽を続けることが重要だと思います。
本当に何かの分野で抜きん出るには、相当な時間がかかります。簡単に誰もが持てはやされるようなスキルを身につけることはできませんが、だからこそ努力を続けることが大切なのではないでしょうか。
今回の経験を通して、目先の楽さや高収入に目を奪われるだけでなく、その仕事を通して何が得られるのか、将来につながるスキルが身につくのかといった視点を持つことの大切さを改めて感じました。
皆様は、仕事に何を求めますか?今回の話が、少しでも皆様の考えるきっかけになれば幸いです。