隣の芝生は青く見えるもの

2025年5月13日火曜日

働くこと

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 私はこれまでに日本以外で、タイ、ベトナム、ラオスで会社員として働いた経験があります。特に今回は、ベトナムで働いていた頃のエピソードをまとめてみました。

ベトナムのホーチミンシティで会社員生活を送っていた私は、ある会社で色々とあり、転職をしたいと思ったことがありました。ベトナムで日本人が仕事を探す場合、おそらくほとんどの方が現地の人材紹介会社に登録して、仕事を紹介してもらい、面接を受けるという流れになるかと思います。私も例に漏れず、いくつかの人材紹介会社に登録しました。

この人材紹介会社というのが、なかなかに厄介なものですね。中には求職者のことを本当に親身になって考えてくれる会社もあれば、一方で全く求職者を駒のように考えているような会社もあったりします。人材紹介会社は求職者を企業に紹介し、仕事が決まれば手数料として会社にお金が入るビジネスですから、当然ビジネスとして仕事に取り組んでいるわけです。しかし、あまりにもビジネスライクにサバサバとやられてしまうと、求職者としては物足りなさを感じてしまいます。人材紹介会社を通じて就職活動するのであれば、コンサルタントの方には本当に親身になって、こちらのことを考えてくれ、具体的なアドバイスがもらえるような方を頼みたいと思うものです。

ベトナムにはいくつかの人材紹介会社がありましたが、その中で一社、とても頼りになる会社がありました。その会社はホーチミンシティにあり、それほど大きくはないながらも、日本人のマネージングダイレクターの方が社長と人材エージェントを兼務されているような会社でした。その方にお話を伺いに行ったのですが、非常に人生経験が豊富な方で、良いことも悪いことも含めて、求職者のキャリアプランなどについて本音で相談に乗ってくれる方でした。私は「この人なら色々相談できるな」と思い、思い切って一つ質問をしてみたことがあったのです。

その質問というのは、当時35歳を過ぎていた私の年齢で、全くの未経験から人材紹介会社に就職することは可能か、というものでした。その人材コンサルの方から返ってきた答えは、「君の年齢ではもうダメだね」というものでした。人材コンサルという仕事は、若い人が中心となって動いているビジネスモデルだから、諦めなさいとはっきり言われたのです。それを聞いて、正直かなり残念ではありましたが、仕方ないのかなとも思いました。

なぜ私が人材紹介という仕事に興味を持ったのかというと、実は少し下心もありました。当時会社員として働いてはいましたが、東南アジアで日本人が働くというのは、身分が非常に不安定なことも多く、いつ会社をクビになるか分からない、キャリアプランも不安定だと悩む時期があったからです。それで職を転々としたりもしました。そんな生活の中で、「人材紹介会社でコンサルとして働けば、とりあえず自分の仕事は確保されるし、求職者に仕事を紹介して給料をもらえるなら、こんな素晴らしいことはないな」と思ったのです。自分はとりあえずクビにならず、安全地帯にいられるだろう、くらいに考えていたわけです。

ところが、色々と調べてみたり、実際に人材コンサルをやっている方のお話を聞いたりするうちに、人材紹介会社での仕事はそんなに甘いものではないのだということがよく分かりました。確かに、理想的にうまくいけば、キャリアに悩む人に仕事を紹介して感謝されることもあるでしょう。ただその一方で、人材コンサルの人たちは営業ですから、達成しなければならない「数字」を抱えているのです。これは仕方ないことかもしれませんが、数字を抱えているという時点で、とにかく売上を上げなければならないという、厳しい世界に身を置くことになるわけです。

外から見て「いいな」と思っても、実際にやってみたら大変なこともたくさんあるのだなと、今では思っています。これが今回のタイトルの「隣の芝生は青い」という言葉の通りですね。このことわざは、「何でも他人のものはよく見える」という意味です。

世の中には、得てしてそういうことがあります。自分の仕事がうまくいかなかったりして、他の会社で働いている人がなんだか楽しそうに見えたり、楽そうに見えたりすることがあります。しかし、実際には蓋を開けてみるとそうではなかったりします。外から見て楽しいというのは一面であって、その業界にいて働いていると、非常に苦労があったりするわけです。苦労の部分は外からは見えづらいものです。

もし、この「隣の芝生が青い」という状態に陥ることがあったとしたら、他人の輝いているところはもちろんですが、そうではない、別の部分にも思いを馳せてみるのが良いのではないでしょうか。

今回の私のベトナムでの経験を通じて、改めてこのことわざの意味を実感いたしました。どんな仕事にも、外から見えない大変さや苦労があるものですね。


Preplyでビジネス日本語を教えています。日系企業で働いてみたい方、日本語の更なるスキルアップを目指す方など大歓迎です。お気軽にお問い合わせ下さい。

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