結論から先に言えという指導がもたらす弊害について

2025年6月9日月曜日

日系企業の文化

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日系企業で働いていると、多くの方が最初に指導されるのが「報連相」というコミュニケーション手法だと思います。これは「報告」「連絡」「相談」の頭文字を取ったもので、これをしっかり行うことで、周囲の人も安心し、大きな問題が起こりにくくなると言われています。

この報連相の場面、特に部下から上司への報告などで、「結論から先に言いなさい」という指導を受けることも少なくないのではないでしょうか。

今回は、この「結論から先に言え」という指導がもたらす可能性のある影響と、ビジネスにおける話し方について掘り下げてみたいと思います。

私達が普段している話のタイプは大きく分けて二つあると考えられます。

  1. 結論先行型

    • 構成:まず結論を述べ、次にその理由や「なぜそうなるのか」を話し、最後に補足を行うスタイルです。
    • メリット短時間で要点が相手に伝わることです。
    • 向いている場面:会議での発言、部下から上司への報告、上司から部下への指示といった、効率的に情報を伝える必要がある場面に向いています。
  2. ストーリーテリング型

    • 構成:物語のように、背景、問題提起、試行錯誤の過程、そして結果という流れで話を進めるスタイルです。昔話のように「昔々あるところに…」と始めるのもこれにあたります。
    • メリット聞き手の感情を動かし、話が印象に残りやすいことです。
    • 向いている場面:プレゼンテーション、講演、教育現場といった、共感や理解を深めたい場面に適しています。

日系企業で働いていると、結論先行型のコミュニケーションはどんどんうまくなる一方で、ストーリーテリングの方はほとんど訓練されないという問題が浮上してきます

なぜ、日本ではストーリーテリングのスキルがあまり鍛えられないのでしょうか? いくつかの理由が考えられます。

  • 日本のビジネス教育において、論理的思考があまりにも重視されすぎていること。
  • 物語を作ったり構成したりするスキルが、普段の業務で鍛えられる機会が少ないこと。
  • たとえ朝礼での1分間スピーチのような機会があっても、どこか馬鹿にされたり、からかわれたりする雰囲気があり、真剣に取り組まない傾向があること。
  • 人前での発表に対して恥ずかしさや恐怖を感じたり他人(同僚や上司)からの批判や評価を気にしすぎたりする人が多いこと。
  • 日本人のビジネスマンには、時間をかけることに罪悪感を持ってしまう人も多いこと。「早く要点を言え」ということが美徳とされており、話を面白く膨らませること自体が悪いことだと感じてしまう人もいるようです。
  • 結論優先型が「理解」を目的とするのに対し、ストーリーテリング型は「共感」を目的としているため、話し手にはかなりの発想の転換が求められ、習得が難しいこと。

しかし、今後、日本企業はますます、結論先行型だけでなく、ストーリーを語る訓練も社員にさせる必要があると私は思います。

なぜなら、グローバルな時代においては、単に「阿吽の呼吸」で相手の気持ちを察するといったコミュニケーションだけでは通用しないからです。ストーリーを考え、構成する話術を鍛えることが、日本人のビジネスマンにも求められてくるでしょう。

特に、結論先行型でのコミュニケーションに慣れてしまった場合、意識的にストーリーテリングのスキルを磨く訓練をしないと、この能力が十分に育たないままになってしまう可能性があります。

結論先行型とストーリーテリング型は、それぞれ異なる目的と場面に向いています。どちらか一方に偏るのではなく、状況に応じて適切に使い分けるためには、両方のスキルをバランス良く鍛えることが重要だと言えるでしょう。特に、今後グローバルな舞台で活躍していくためには、聞き手の心に響き、共感を呼ぶストーリーを語る力が、ますます必要になってくるのかもしれません。



Preplyでビジネス日本語を教えています。日系企業で働いてみたい方、日本語の更なるスキルアップを目指す方など大歓迎です。お気軽にお問い合わせ下さい。

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