今回は、「早朝出勤」というテーマで、私の経験を交えながらお話ししたいと思います。日本の企業文化、特にその歴史の中で見られるこの働き方について、皆さんと一緒に考えていきましょう。
「早朝出勤」とは何か?その実態と問題点
「早朝出勤」とは、朝の定時よりも早く会社に出勤し、仕事を始めることを指します。例えば、勤務開始が午前8時の会社であれば、1時間早く午前7時に出社するといった形です。
この早朝出勤には、少々問題が潜んでいます。厳密に言えば、これはサービス残業に当たる働き方なのです。労働者は仕事をしているものの、会社側はそれに対して給料を支払う必要がないと規定されている場合が多いのです。これは、労働者が自発的に早く会社に来ているという解釈に基づくため、「他人から強制されるものではない」「ルールに則ればやる必要がない」とされています。
かつての日本企業と「パフォーマンス」としての早朝出勤
しかしながら、特に昭和時代から平成初期にかけての日本企業では、この早朝出勤は非常によく見られました。なぜなら、早朝出勤をしている社員は、上司から見ると「なんとなく可愛く見える」「早く来て何か仕事をしているな」と感じられやすかったからです。これは、下の立場から上司に対する**「パフォーマンス」として機能していた**側面があると言えるでしょう。
私自身も、サラリーマン時代にこの早朝出勤を試したことがあります。自分の評価や待遇が上がるのかどうかと期待してやってみたのですが、確かに上司からの受けは良くなり、「早く来て偉いね」といった口頭での褒め言葉はもらえました。しかし、それ以上でも以下でもなく、大幅に評価が上がるということはない、というのが現代の日本企業の実態だと感じています。
タイでの忘れられない経験:義務化された早朝出勤
そんな私ですが、かつてタイで勤めていた際、この早朝出勤を「義務化」とまではいかないものの、半ば無理やりやらされた経験があります。
私は東南アジアのタイで何度か転職しましたが、ほとんどが日系企業でした。日系企業には、労働者が安心して長く勤められるという良い面がある一方で、「同調圧力」という目に見えない空気のようなものが強く、それに逆らいながら働くことが私には結構辛く感じられました。ワークライフバランスを重視する私のようなタイプには、付き合い残業なども含め、日系企業での働き方は厳しいと感じていました。
そこで、一度は海外に来たのだからと、外資系企業を経験してみたいと思ったのです。タイで最後に勤めたのは、日系企業ではないタイ系のローカル企業でした。社長以下のほとんどの従業員はタイ人で構成されていましたが、私と直属の上司は日本人でした。
入社前は「日系企業ではないから、もっと自由に働けるだろう」と期待していましたし、実際に休みも多く、ある程度は思い描いた通りの状況が実現しました。**しかし、その日本人上司がいるせいで、自由ではなかった面もあったのです。**それがまさに、この早朝出勤の話でした。
入社後、私のポジションの前任者である日本人から引き継ぎの際に、「うちの会社に入ったのなら、朝は早く来てください。8時半が出社時刻だけれど、1時間早く来てくださいね」と、はっきりと告げられたのです。私は「なぜだろう?」という疑問を抱きながらも、転職したばかりで波風を立てたくないという思いから、当初はそれに従っていました。
しかし、入社から半年、1年と経つうちに、私は徐々に早く来るのをやめていきました。当初は7時半に出社していたのが、半年後には8時頃になり、2年経つと8時10分頃、そして会社を辞める頃には、通常の出社時刻の10分前である8時20分頃に出社するようになっていました。
上司の態度と「人によって態度を変える」日本人
早朝出勤をしていた頃、私が上司より早く出社することが多かったのですが、私が先にいて上司が後から来た時には、きちんと「おはようございます」と返してくれました。しかし、もし上司が先に会社に来て、私が後から出社すると、たまに私の挨拶を無視することがあったのです。
この時、私は「この人は、こういう陰湿なことをする人なんだな」と感じ、非常に不快な思いをしました。
さらに、同じフロアには別のメーカーから出向してきている日本人駐在員がいました。その駐在員に対しては、私の日本人上司は、雇用関係がないにもかかわらず、いついかなる時も自分から挨拶をしていました。
この一連の出来事を見て、私は「この人は人によって態度を変える人なんだな」とはっきりと悟りました。このような上司のもとで働くのは嫌なものだと感じ、上司への悪い感情がさらに強まった出来事でした。
日本人社会の構造的な問題
今回の経験から私が伝えたいのは、「同じ日本人と言っても、立場によって考えていることや、仕事に対する思いは全く違う」ということです。日本人は決して「一枚岩」ではないのです。
せっかく外資系企業に転職し、自由な働き方を求めていたにもかかわらず、厳しい日本人上司の存在によって、その外資系企業の良さや自由さが半減してしまうケースもあるということです。
外国人の方々には、このように日本人社会には構造的な問題があるということをご理解いただけたら嬉しい、と私は考えております。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。