日本社会に根深く残る「水商売」への偏見と、その背後にある階層意識:見過ごされがちな価値観の歪み

2025年7月14日月曜日

日系企業の文化

t f B! P L

こんにちは。今回は、日本社会に根強く残る水商売や飲食業に対する差別、そしてその背後にある階層意識とダブルスタンダードの構造について、少し踏み込んだ話をしたいと思います。これはあまり表立って語られることのない問題ですが、私はこの構造にこそ日本人の価値観の根底部分がよく現れていると感じています。

サラリーマン時代に感じた「価値観の鋳型」

私は今フリーランスとして活動していますが、独立するまでは長年サラリーマンとして会社勤めをしていました。その時間は、単に仕事のスキルを得ただけでなく、日本社会の空気、もっと言えば価値観の鋳型のようなものに触れる時間だったように思います。職場には本当に尊敬できる人々もいましたが、同時に見過ごせない差別感覚やヒエラルキーの刷り込みにも度々出会いました。

特に気になったのが、水商売への見方です。ホステス、バーテンダー、飲食店の夜の世界、いわゆる水商売というジャンルの仕事を、日本のホワイトカラー層の多くの人たちはどこか下の存在として見ているということです。これは本当に根深い感覚で、彼らの中には「体で稼ぐ仕事」「学歴や計画性ではなく運で成り立っている仕事」と考え、軽蔑混じりに水商売を眺める空気が存在します。

飲食店の「駐在員」への偏見が示すもの

本当に水商売の世界は知的労働より劣っているのでしょうか?私がこのことを痛感した出来事があります。それはタイのバンコクで働いていた頃の話です。現地で懇意にしていた日本人駐在員がいたのですが、彼と雑談する中で、私が大手飲食チェーン店にも現地に駐在員がいると話したところ、彼は**「飲食店の駐在員って、いるんですか?」**と驚いたのです。

この一言には、言葉以上の意味が込められていました。彼にとって「駐在員」は一流企業の特権階級であり、一方で飲食業は「一段格下のビジネス」だったのです。ここに、無意識の階層感覚がはっきりと現れていました

学歴信仰と異なるスキルセット

この問題の背景には、日本社会特有の学歴信仰があります。受験という勝ち抜きゲームを通過した者だけが、大企業に入社したり、国家公務員試験に合格して高級官僚になれるという考え方です。そしてその先に、社会的信用が待っています。

しかし、水商売の世界は学力だけでは到達できません。むしろ必要とされるのは、以下のような全く異なるスキルセットです。

  • 空気を読む力
  • 人との距離感を測る感性
  • 瞬発的な判断力
  • 可愛げや愛嬌
  • 見た目の印象力

だからこそ、エリートの人たちから見ると、そこに優越感と偏見が生まれるのです。自分たちの努力では到達できない世界だからこそ、下に見るという心理が働くのは、人間の心理としてあり得るのかもしれません。

サービスは享受するが、職業としてはごめんだという「ダブルスタンダード」

もう一つ重要なのが、**ダブルスタンダード(二重基準)**の存在です。口では水商売を「軽薄だ」と言う人たちが、実は銀座の高級クラブで豪遊したり、会員制の焼肉屋やバーに顔を出したりすることはよくある話です。これは、「自分ではやらないけれど、そういうサービスは利用する。だがその職業として関わるのは真っ平ごめんだ」という考え方を示しています。

私はこれをかなり歪んだ価値観だと思います。まるで、サービスを享受する権利は自分にあるが、そこにいる人々は別階層であるかのような扱いをしているのです。これこそ、日本の階層社会の縮図だと言えるでしょう。

水商売の「本当の難しさ」

実際、水商売は本当に難しい世界です。「現金商売」「水物商売」とも言われますが、景気にも左右され、経営は常に綱渡りです。常連客の心理を読み、トラブルを事前に察知し、店の雰囲気を操っていく能力が求められます。これはかなりのビジネス感覚と人間観察力が必要であり、むしろ高学歴のホワイトカラーには絶対に真似できないようなスキルが多いとすら、私は思います。

「形式的な信用」を信仰する日本社会

結局のところ、日本社会には形式的な信用を信仰する文化があるのでしょう。学歴、会社の肩書き、年収、勤続年数といった指標が人の価値を決めてしまう傾向があります。しかし、水商売や飲食業の世界は、その価値基準とは全く別のロジックで動いています

そこをちゃんと認識しないと、見えない差別や無意識の偏見を温存してしまうことになります。この問題は非常に目に見えにくい部分ですが、日本人として、あるいはこの社会で働く一人の人間として、こうした価値観の歪みに目を向けることはとても大切なことだと私は考えています。


Preplyでビジネス日本語を教えています。日系企業で働いてみたい方、日本語の更なるスキルアップを目指す方など大歓迎です。お気軽にお問い合わせ下さい。

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