営業の世界でよく話題になるテーマ、紹介が取れる営業マンと、なかなか紹介が取れない営業マンの違いについてお話しいたします。営業の現場で最も力を発揮するのは、やはり紹介案件です。新規開拓も大切ですが、ゼロから人間関係を築くのは大変な労力がかかります。もし紹介から始まった場合は、最初から信頼を前提に話を進められるため、成約率も高くなる傾向があります。
お客様から「あなたを紹介したい」と思ってもらえるかどうかは、営業マンの実力の一つでもあります。しかし現実には、紹介を次々と取ってくる営業マンと、なかなか紹介に繋げられない営業マンが存在するのです。
紹介が取れる営業マンの特徴
紹介が取れる営業マンには、大きく分けて二つのタイプがあります。
- 人たらし型
- いわゆる懐に入るのが上手なタイプです。
- お客様との雑談を通じて自然に距離を縮め、信頼や好意を得て、「この人に誰かを紹介しても大丈夫だ」と思わせます。
- 利益型
- 仕組みやメリットを提示して紹介を促すタイプです。
- 例えば、「紹介いただければお礼があります」とか、「あなたのお友達にも得がありますよ」といった形で、システムを活用して紹介を生み出すスタイルです。
これら二つのアプローチは異なりますが、共通しているのは、紹介する側のリスクを下げているという点です。つまり、「この人を紹介しても大丈夫」と思わせたり、あるいは「むしろ紹介した方が得だ」と思わせたりすることに成功しているのです。
紹介がなかなか取れない営業マンの特徴
一方で、紹介がなかなか取れない営業マンには、どのような特徴があるのでしょうか。これは、能力が低いからとか、営業が下手だからというわけではありません。
- 人柄も悪くなく、商品説明もしっかりできる。
- お客様からの信頼もそこそこ得られている。
- しかし、「友達を紹介してくれませんか」と口にすると、どこか重い雰囲気になってしまうことがあります。
- そのため、紹介が出ることがあっても、継続的には生まれてこないのです。
実際に私自身も、営業として数字を作ることはできていましたが、紹介に関してはお願いしてもぎこちない感じになり、数を取ることができませんでした。
紹介が多かった先輩の事例
以前、ケーブルテレビの営業をしていた頃、やたらと紹介を取ってくる先輩がいました。彼は高卒で、いわゆる「元ヤン」でしたが、成績もずば抜けていました。彼を観察して分かったことは以下の通りです。
- 人の懐に潜り込むのが非常に上手。
- 元ヤンだからこそ、場の空気を読むのが早く、相手を警戒させない雰囲気を作るのが得意でした。
- ただお客様と仲良くなるだけでなく、「この人を助けたい」「この人を応援したい」と思わせる何かがありました。
- 義理と人情の世界に強いタイプ。
- さらに、「この人だったら友達に紹介しても大丈夫だ」と思わせる安心感がありました。紹介する側が一番恐れるのは、紹介した相手が嫌な思いをすることですが、彼はそのリスクを極端に下げていたのです。
この先輩は、理屈ではなく体で、人との接し方、人の扱い方を覚えていたのでしょう。それが結果として紹介に繋がっていたのです。
「人たらし」ではないタイプが紹介を取る方法
もし私のように「人たらし」の適性がなくても、紹介を取る方法はあります。真面目に誠実に営業活動に取り組んでいても紹介が得られず困っている方も、諦める必要はありません。
- お礼と安心の設計
- もし紹介をしてもらったら、必ず感謝を伝え、丁寧に対応することが非常に重要です。
- 最も大切なのは、**紹介してくれた人の顔に泥を塗らない(顔を潰さない)**ことです。これを徹底するだけで、次の紹介に繋がりやすくなります。
- 紹介しやすい状況を作る
- ただ「誰か紹介してください」と言うのではなく、具体的なシーンを提示するのです。
- 例えば、「もし周りにこういうことで困っている人がいたら、ぜひ私を思い出してください」と伝えることで、相手に想像してもらい、紹介が現実化しやすくなります。
- 小さなお願いから始める
- いきなり「お客様を紹介してください」というのは重い場合があります。
- 「こういう話に興味がありそうな人がいたら教えてください」という程度から始めてみましょう。軽い依頼の方が、紹介は発生しやすくなります。
- 仕組みを持つ
- 紹介カードや紹介特典キャンペーンなど、制度を用意することも大切です。
- 制度やシステムがあれば、友情や好意に依存せず、自然に紹介が回りやすくなります。
- ただし、この「仕組みを持つ」ことについては、予算の問題や「自爆営業」に繋がる可能性もあるため、勤務している会社と相談しながら、会社ぐるみで営業キャンペーンを構築していくのが良いでしょう。
紹介が取れる営業マンは、確かに人たらしや義理に強い人が多い傾向にあります。しかし、そうではない場合でも、仕組みを作ったり、様々な工夫を凝らしたりすることで、生まれ持った才能を補うことができます。紹介は、才能だけでなく、設計によっても作れるものなのです。
人間関係で勝負できる人は確かに強いですが、そうではない人も、自分なりのやり方で戦えるということを知っていただけたら幸いです。