会社員として働く中で、一度はこう思ったことがあるのではないでしょうか。
「もう、辞めたい。」
理由は人それぞれです。
転職したい、独立したい、少し休みたい、あるいは旅に出たい。
どれも間違いではありません。むしろ自然な感情です。
ただし――ここで一つ、決してやってはいけないことがあります。
それは、その悩みを社内で相談することです。
今日は、なぜ「会社を辞めたい」という話を社内では絶対にしてはいけないのか、
その理由を丁寧に解き明かしていきます。
1. 社内の人は、サラリーマンの視点でしか話せない
まず大前提として、会社の同僚や上司は、同じ構造の中で生きている人たちです。
彼らのアドバイスは、その構造の中でしか成立しません。
転職経験がない上司は「辞めない方がいい」と言うでしょう。
起業経験がない同僚は「サラリーマンが一番だ」と言うでしょう。
それは悪意ではなく、**彼らにとっての「常識」**なのです。
しかし、その常識が、あなたの未来にも当てはまるとは限りません。
社内相談とは、結局のところ、
自分の人生を“社内の価値観”で査定してもらう行為にほかなりません。
2. 上司の「引き止め」は、善意ではなく自己防衛
日本の企業文化では、退職の話題ほど扱いにくいものはありません。
特に、新卒から勤めている社員が辞めたいと言い出した瞬間、
上司からの激しい引き止めが始まります。
なぜか。
上司にとって、部下が辞めるというのは「自分の責任」と思われたくないからです。
「マネジメント力が足りなかった」と評価されるのを恐れるのです。
つまり、あなたを引き止めるのはあなたのためではなく、上司自身のため。
その構造を理解しておかないと、簡単に“説得”され、
気がつけば再び同じ場所で疲れ切った日々を送ることになります。
3. 辞める人は「裏切り者」に見える
日本の職場には、暗黙の「共同体意識」があります。
同じ船に乗っている限り、仲間。
しかし、一人でも降りると言い出した瞬間、
その人は裏切り者のように扱われます。
これは理屈ではなく、感情の問題です。
残された人々は「なぜ自分だけここに残るのか」と自問することになる。
その不安を消すために、
辞める人を“否定する”という心理的防衛が働くのです。
そして多くの場合、退職した途端、
それまでの人間関係はきれいに途切れます。
あれほど仲の良かった同僚も、次第に連絡が途絶える。
それが職場の友情の限界です。
4. 「やっぱり辞めません」は信用を失う最悪の一手
いちばん危険なのは、
「会社を辞めたい」と口にした後で「やっぱり辞めません」と撤回することです。
一度そう言ってしまうと、会社での信用は一気に落ちます。
「こいつは気まぐれだ」「信用できない」と思われ、
長年積み上げてきた信頼残高がゼロになるのです。
サラリーマンの世界では、前言撤回は許されません。
「決めたことを撤回する人間」として、
あなたの評価は静かに下がっていくのです。
5. 退職の相談は「社外」で、伝達は「決意後」に
では、どうすればいいのか。
答えはシンプルです。
退職の相談は、社外で行う。
社内には、決まるまで何も言わない。
相談相手に選ぶのは、家族、あるいは社外の信頼できる人だけです。
社内に「信頼できそうな人」がいても、話してはいけません。
その人がどこで誰と繋がっているか、あなたには分からないからです。
社内での情報漏洩は、あなたの未来を最も簡単に壊すものです。
結論 ― 退職は「人生の主権」を取り戻す行為
退職の相談を社内でしない方がいい理由は、
結局のところ「あなたの人生の主権を守るため」です。
人は迷うと、つい他人に判断を委ねてしまいます。
しかし、退職というのは、他人の意見を聞く場面ではありません。
自分で決め、自分で責任を取ること――
それが本当の自由の第一歩なのです。
社内の空気に支配されず、
自分の未来を他人の都合に委ねず、
静かに決断する。
それこそが、サラリーマンとして働く最後の“美しい一手”ではないでしょうか。