会社員時代を振り返ると、会議や雑談の中で、
やたらと横文字を並べるサラリーマンをよく見かけました。
そのたびに私は心の中でこう思っていました。
「それ、味あるの?」
今日は、そんな“サラリーマン語の食卓”を覗きながら、
彼らが大好物にしている「最適解」と、
つまみにしている「横文字珍味」について考えてみます。
🍱 サラリーマンの大好物 ― 無難な定食「最適解」
まずは、どこの職場でも出てくる定番メニュー、「最適解」。
辞書的には「最も適した答え」。
だが、実際の現場では、**「誰も反対しない無難な答え」**を意味することが多い。
会議で意見が分かれると、
誰かがすかさず「まぁ、これが現状では最適解じゃないかな」と言う。
この一言が出た瞬間、
議論はちょうどお昼の定食みたいに温く、まとまる。
「最適解」とは、言い換えれば栄養はあるけど味がしないランチです。
腹は満たされても、心は満たされない。
かつてバンコクで日系IT企業に勤めていた頃、
ある上司が真顔で「これが一番の最適解だ」と言ったことがありました。
その時ふと思いました。
日本のビジネス会議とは、定食屋で無限に“日替わりランチ”を食べ続けるようなものだ、と。
🍢 サラリーマン用語の珍味 ― 癖の強い横文字たち
さて、定食の次は珍味の時間です。
珍味とは、少し癖があり、通好みで、慣れない人には刺激が強い言葉のこと。
ビジネスシーンでは、この横文字珍味がテーブルを賑わせます。
🥢 珍味その1:わさび過剰「エビデンス」
意味は単に「証拠」ですが、これをやたらと連呼する人がいます。
「それ、エビデンスあるの?」と聞かれるたび、
まるで刺身にわさびを山盛りにされたような刺激を感じます。
🍷 珍味その2:空気を噛む「シナジー」
合併、提携、協業――どんな場でも登場する万能スパイス。
しかし実際には、味のしない空気のような言葉です。
「シナジーを生む」という言葉ほど、
“何も起きていないのに起きた気になる”魔法のフレーズはありません。
🌶️ 珍味その3:激辛スパイス「コミット」
本来は「約束する」ですが、
日本の会議では「死ぬ気でやれ」に翻訳されます。
辛すぎて涙が出る、精神論のデスソースです。
🍽️ 珍味その4:高級フレンチ風「バリュー」
「バリューを出す」と言えば聞こえはスマート。
しかし実態は「成果を出せ」の言い換え。
言葉だけフレンチ、味は社員食堂です。
🥦 栄養のある料理を作れる人が、生き残る
これからの時代、
こうした「最適解」や「横文字珍味」は、
もはや通用しなくなっていくでしょう。
海外の職場では、
「誰が責任を取るのか」「どう成果を出すのか」という、
もっと噛みごたえのある実務的な言葉が求められます。
見た目の良い料理(言葉)より、
腹に残る栄養=行動力と結果が問われるのです。
「最適解」を探すよりも、
手を動かし、試行錯誤しながら“新しいレシピ”を生み出す人こそ、
これからの時代に評価されるでしょう。
🍳 言葉に溺れず、意味を味わえ
もしあなたの職場で、
「最適解」や「シナジー」といった横文字の珍味が飛び交っているなら、
少し立ち止まって考えてみてください。
その言葉には、本当に栄養があるのか?
それとも、ただの“味付け”にすぎないのか?
言葉遊びの食卓から一歩抜け出し、
自分の手で意味を“調理”できる人こそが、
本当のビジネスパーソンです。
定食も珍味も要らない。
自分で火を起こし、自分で味を作れる人になれ。
それではまた。