組織で賢く生きる術 ──社長の前で「自由」を隠すべき理由

2025年12月22日月曜日

処世術

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今日は、

自由を求める個人と、日本の会社組織がなぜ衝突しやすいのか
そして、その摩擦をどうやり過ごせばいいのかについて書いてみます。

とくに、海外駐在やグローバル案件など、
一見すると華やかに見える立場にいる人ほど、
注意すべきポイントがあります。


組織が信頼するのは「能力」ではなく「耐性」

まず前提として、日本企業が本能的に信頼するのは、
突出した才能や自由な発想よりも、
一貫して耐え、従い、積み上げてきた人間です。

多少理不尽なことがあっても投げ出さず、
組織の論理に適応し続ける。
この「耐性」こそが、評価の土台になります。

この傾向は、海外駐在という文脈で、特にはっきり現れます。


海外駐在の「華やかさ」は、見せてはいけない

海外駐在と聞くと、
多くの人は華やかな生活を想像します。

たとえば東南アジア。
高級コンドミニアム、広いプール、ドライバー付きの車。
日本の満員電車とは無縁の、快適な暮らし。

実際、その通りのケースもあります。

しかし、重要なのはここです。
その快適さを、社長の前で語ってはいけない。

「駐在、最高です。毎日楽しいです」
そんな言葉を聞いた瞬間、
会社側の認識はこう変わります。

「余裕があるなら、もっと負荷をかけられるな」

組織にとって、
駐在は「褒美」ではありません。
任務です。

だからこそ、
「会社の命令だから仕方なく行っている」
くらいの温度感が、最も安全なのです。


駐在員は「企業文化の伝道師」である

日本企業の海外進出において、
駐在員に求められる役割は、単なる業務遂行ではありません。

本社の考え方、社風、価値観。
つまり、日本の企業文化を現地に浸透させること

私はこれを、
かつてのイエズス会による布教活動に近いものだと感じています。

個人の自由を満喫する存在ではなく、
本社の思想を運ぶ存在。

この前提を理解していないと、
不用意な一言で評価を落とすことになります。


「忙しい人間」を演じるという高度な技術

ここで、私自身の実体験を一つ。

ホーチミンで働いていた頃、
東南アジア全体を統括する日本人プロジェクトマネージャーがいました。

ある日、日本の社長を交えた打ち合わせの場で、
社長が彼にこう尋ねました。

「ホーチミンのコンドミニアム、どう?」

彼の返答は、即座でした。

「プールはあるんですが、仕事が忙しくて泳ぐ暇がなくて」

私はこの一言に、強く感心しました。

彼が実際に泳いでいたかどうかは、問題ではありません。
重要なのは、社長の前で「余裕」を一切見せなかったことです。

もし「毎日泳いでますよ」と答えていたら、
社長の頭にはこう浮かんだでしょう。

「じゃあ、案件を増やせるな」

彼は、
自由を隠し、忙しさを演じる
という組織言語を、完全に理解していたのです。


組織は「自由」では動かない

自由は尊いものです。
しかし、会社組織は自由では動きません。

組織が重視するのは、
責任
再現性
コントロール可能性
です。

だからこそ、
自由を求める人ほど、
会社という場では「演じる」必要があります。

バックパッカー経験。
海外生活の快適さ。
駐在の楽しさ。

それらは、誇っていい。
ただし、見せる相手と場所を間違えないこと

自由は胸に秘め、
外では「責務を果たす人間」を演じる。
これが、日本社会で生き残るための知恵です。


社長が求める「見返り」という本音

もう一つ、忘れてはいけない現実があります。

日本社会では、
他人の幸福を無条件で祝福する文化は、決して強くありません。

社長も例外ではありません。

部下が楽しそうに遊んでいるより、
寝ずに必死で働いている姿の方が、はるかに「可愛く」見える

それは、
「自分が金を払った価値がある」
と実感できるからです。

だから、もし社長にご飯を奢ってもらったら、
「ごちそうさまでした」で終わらせてはいけない。

その奢りには、
必ず仕事で返すことを期待されている
と理解すべきです。


自由を捨てずに、組織で生きるために

この話は、
自由を否定するものではありません。

むしろ逆です。

本当に自由でいたいなら、組織の言語を理解せよ。

自由をそのまま見せるのではなく、
組織が理解できる形に翻訳して示す。

それができる人間だけが、
組織の中で消耗せず、
外では自由を守ることができます。

日本企業で賢く生きるとは、
従属することではありません。
理解したうえで、使い分けることです。

それができるかどうかで、
同じ能力でも、人生の景色は大きく変わってきます。

それでは、また。


Preplyでビジネス日本語を教えています。日系企業で働いてみたい方、日本語の更なるスキルアップを目指す方など大歓迎です。お気軽にお問い合わせ下さい。

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